生理不順とホルモン異常

生理不順は排卵がうまくいっていない事が原因です。卵巣機能不全とも言います。卵巣はまず卵を育てるために卵胞という卵の入った袋を育てていきます、そのときエストロゲンというホルモンが卵巣から出ます。卵胞がある程度の大きさになると(約2cmくらい)卵胞から卵がぽんと排卵します(実際は見た人がいないので良くわかっていないが、イメージとしてはそんな感じ)。排卵したあとの卵胞は黄色くなって黄体と呼ばれるものに変化していきます。黄体からは黄体ホルモンが出ます。この黄体ホルモンは子宮内膜に作用して受精卵の着床に働きます。10日ほどたっても受精卵が着床しない場合は黄体は退縮(なくなってしまう)して黄体ホルモンもなくなり、内膜はその構造を維持できなくなって脱落してきて生理になってしまいます。黄体ホルモンは体温を少しあげる作用があります、基礎体温の高温相はこの黄体ホルモンの作用によるものです。

基礎体温を記録しましょう基礎体温表

生理不順の場合はまず基礎体温を表に記録することが大事です。基礎体温表で何を見るかというと、低温相と高温相にわかれる二相性という状態になっているかどうかを見ます。

基礎体温の測り方は不妊症のところで説明しますが、なかなか慣れないときれいなグラフになりません。特に高価な婦人体温計を使われている場合、測定時間が短かすぎてちゃんとした基礎体温が測れてないことが多いです。簡易に測る分にはいいですが(なんとなくいつごろ排卵するのかを知りたいなど)治療というレベルでは使えません。驚いたのは最近の基礎体温計はスマホと連動していて10秒程度で測れて、結果をスマホに飛ばすとグラフになって出来てきたりします。アイデアは面白いですが、とにかく10秒では医療レベルでは使えません。

生理不順や不妊症などの治療をする場合は実測値で測るようにして下さい。実測値の場合だいたい5分程度測らないといけないと思います。それじゃ長すぎてまた寝てしまう!という人がおられますが、それでも実測でないと使えません。ちゃんとした排卵日を特定するのが不妊治療の第一歩ですが、それが意外と難しいのです。ですから正確な基礎体温表がどうしても必要になります。ところで基礎体温が下がった時が排卵日とよく言われますが、あれはあまりあてになりません。やはり高温相になる前が排卵日としか言えません。ですから排卵日は排卵した後でないとわからないです。詳しくは不妊治療の項で説明します。

基礎体温は二相性なら問題ないか

二相性になっていたら、今度は高温相が10日以上続いているかを見ます。10日以上続いていれば高温相としては問題はないと言うことになります。低温相に関しては短いのは問題ないとは思いますが、もしかすると良くないかもしれません。例えば低温相が10日、高温相が10日で20日で生理になる場合、月に2回生理になる感じになりますが、これが良くないかどうかははっきりわかりません。おそらく問題ないと思います。あまり早く排卵するのは未熟な卵じゃないかという話しもありますが、本当に未熟なら排卵しないはずなので問題ないと思っています。ちゃんとした研究はないようです(僕が知らないだけかもしれませんが)。不妊治療をしていると10日目排卵のような患者さんはしばしばいます、妊娠しないことはありませんが、しにくいかなという印象はありますね。

生理がなければなぜいけないのか?(パート1)

生理がないとなぜいけないのかと言うと、まず第一に生理がなければ排卵してないので妊娠できません。次に無排卵の状態が長く続くとエストロゲンという女性ホルモン(卵胞ホルモンとも言う)がずっと出つづけます。エストロゲンには発癌作用があると言われています、その作用を打ち消す働きが黄体ホルモンにあるのです。したがってエストロゲンと黄体ホルモンが交互に出ることにより(実際はエストロゲンは高温相でも出つづけている)、発癌作用が打ち消されているのです。したがって無排卵の状態が長く続くと黄体ホルモンが出ないので子宮体癌などの癌にかかる可能性が出てきます。また、無月経の人の中に(これは生理不順と言うよりまったく生理のない人に多い)はまったくエストロゲンが出ていない人もいます。このような場合は発癌性はありませんが、更年期の女性のように骨がもろくなる骨粗しょう症という病気になりやすくなります。どちらにしろ体に良くないので生理不順は治療の対象になるのです。ということはこのような状態でなければ多少の生理不順はほっといてもよいということになります。2か月に1回排卵していればまず問題ありません。3か月に1回となるとちょっと長い気がします。

生理がなければなぜいけないのか?(パート2 発生学的考察)卵管卵巣の絵

ところで、生物学的になぜ生理がないといけないのかということになると、まったくわかっていません。動物で生理があるのは人間とサルだけという話しを聞いたことがあります(よく知りませんが)。犬も出血しますが、あれは排卵の出血で生理ではないと犬の説明書に書いてありました。したがって犬は出血しているときに交尾すれば妊娠するということですよね、人間は生理中に性交しても妊娠しません。不妊治療の論文に雑記のような形で生理がなぜ人間にあるのかを書いている人がいましたが(外人)、その人の意見では確か子宮の中の菌を定期的に外に出しているというようなことだったと思います、しかしどんな動物でも子宮は腟を通して外界とつながっていますから菌の侵入の可能性はあるわけですから、人間とサルだけというのはどうかなと思います。ある先生は(僕の先輩)卵管と卵巣がつながってないから生理がある、やはり体の中に菌が入り込まないようにするメカニズムのようだということを言ってました(おそらく何かに書いてあったのだと思いますが)、人間の場合卵管はおなかの中に開いています、つまり女性のおなかの中は腟、子宮、卵管を通じて外界とつながっているのです。多くの動物では卵管はそのまま卵巣につながっていておなかの中は外界とはつながっていません。したがって外界の菌がそのままおなかの中に入ってくることはありませんが、人間とサルはその可能性があるので定期的に生理になって菌を排除しているらしいということのようです。だったら何も卵巣と卵管のつながりを切る必要はなかったんじゃないかと思うわけです。そんな難しい進化をして何の得があったのでしょうか?生理痛や多量の出血というありがたくない副産物を生じてまで卵巣と卵管の間を断ち切ってしまったのは何だったのでしょうか?謎ですね。ちなみに人間の男性もおなかの中と外界とはつながってません。したがって女性のように骨盤腹膜炎などのようなおなかの中の炎症(多くは性病による)は起こりません。

 

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