子宮外妊娠

子宮外妊娠の絵子宮の外に妊娠した場合を子宮外妊娠と言いますが(そのまま)、そのほとんどは卵管妊娠です。ほかにも卵巣妊娠(排卵前の卵子に精子が受精するのかどうかはわかっていません、きわめてまれです)、腹膜妊娠(腸の表面やいわゆる腹膜に妊娠する、この原理から言えば男も女性ホルモンを与えて受精卵をおなかに移植すれば妊娠することができるはず・・ただしちゃんと育つかどうかはわからない)、また子宮の出口あたりに妊娠する頚管妊娠というものも子宮外妊娠です。

卵管妊娠

もっとも多いのが卵管妊娠です。卵管の出口付近に妊娠するのが膨大部妊娠、卵管の腕の部分に妊娠するのが狭部妊娠といいます。卵管に妊娠しているので当然子宮の中には胎児はいません。妊娠反応が陽性で子宮の中に胎児の入っている袋(胎嚢)がないときにこの子宮外妊娠を疑うことになります。平成元年ごろまでは腟から見る超音波(経腟エコー)がなかったので、妊娠の初期に胎嚢が見えないのはあたりまえでした、ですからしばしば子宮外妊娠は破裂したあとで見つかったものです。現在では経腟エコーで検査することで破裂する前に少なくとも疑いを持たれることが多いです。膨大部妊娠より狭部妊娠のほうが破裂しやすく、重症化しやすいといわれますが、頻度的には圧倒的に膨大部妊娠が多く、その他の子宮外妊娠は少ないです。

卵管妊娠破裂

 子宮外妊娠の破裂とは卵管で成長した胎嚢や絨毛が卵管を突き破って出血し始めた状態です。かなり出血しますので処置が遅れると母体(母親)が死亡することもあります。したがって破裂する前に診断する必要があるのです。

子宮外妊娠の診断

しかし妊娠反応陽性で子宮内に胎嚢がない状態は必ずしも子宮外妊娠ではありません、ほかに考えられるのが流産や正常妊娠のごく初期などです。したがって子宮外妊娠が疑われてもしばらくは様子を見るということになります。このとき重要なのが妊娠反応の強さです、これが1000単位/little(血液や尿)を超えるようであれば子宮外妊娠の可能性が高くなります。しかし2000-3000単位あっても正常妊娠のこともあり、必ずしもそれだけで診断できるものでもありません。卵管にある胎嚢がエコーで見える事もありますが、よく見えないことが多いです。

子宮外妊娠の特徴的なエコー所見(診察から得られる情報のことです)は子宮内に胎嚢が無く、子宮の後ろ側の腹腔内に出血と思われる液体の貯留があることです。これは子宮外妊娠の部分から出血していることを表します。こういうときは患者さんはすでにおなかの痛みを訴えています。しかしこれも確実には子宮外妊娠の証拠にはなりません。正常妊娠でも子宮の後ろに液体(この場合は血液ではないので腹水といいます)がたまることはあります(量は少ないです)。このたまった液体を注射器で刺して吸い取って、出血かどうかを調べるダグラス窩穿刺(だぐらすかせんし)というのをする事があります。この方法で出血が確認できれば子宮外妊娠の可能性は高いといえます。最近はエコーの精度が高く血液かどうかの判断もある程度する事が出来るので、このダグラス窩穿刺もほとんどやらなくなりました。

腹腔鏡検査(手術)による子宮外妊娠の診断・治療腹腔鏡手術(外妊)

子宮外妊娠を正確に診断するためにもっともよく行われるのが腹腔鏡検査(手術)です。卵管が紫色に腫(は)れていれば卵管妊娠間違いないので、卵管を切除したり、妊娠しているところを切り開いて中身を出してしまいます。卵管ごと切り取るのを根治手術といい、妊娠しているところだけを切り開くのを温存手術と言います。つまり卵管が残るかどうかですが、最近は残す傾向にあります。

ただし、残せば妊娠した部分が完全に取りきれないで再手術する可能性が高くなり、また残した卵管にまた子宮外妊娠を起こすこともあります。状況によっては卵管を残せないこともあります、たとえば癒着がひどいときや出血がひどいとき、また卵管妊娠の場所によっても変わってきます。卵管の出口付近の妊娠は温存しやすいのですが、それ以外では温存しても再疎通率(つまりちゃんと卵管が通っている率)が低いようです。ただしおなかの中の癒着がひどかったり、きわめて緊急性が高いときなどは開腹手術になります。当院では開腹手術も腹腔鏡手術もしてませんので、子宮外妊娠を疑った時点で適切な病院をを紹介しています。

クラミジアによる卵管炎

クラミジアなどに感染したことがあると卵管炎を起こしていることがあります。卵管炎は子宮外妊娠の大きな原因の一つです。受精卵が卵管に着床してしまうのは卵管の内膜が炎症で障害を受けて受精卵の移動がうまくいかず(受精卵は自分では動けないので卵管内膜の繊毛(せんもう)という小さな毛のような物がゆっくり受精卵を動かしているのです)卵管内で大きくなり、着床してしまうためと考えられています。

 

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