エミッタ接地増幅回路-4 エミッタ抵抗とコレクタ抵抗

エミッタ抵抗とコレクタ抵抗

もしベースのバイアスを1vに決めたとしたら、さっきの理由でエミッタの電圧は1-0.6=0.4vになります。ほかがどうなろうがここは0.4vになるのです。するともしReを1kオーム(1000オーム)にしたとすれば、オームの法則よりI=E/Rなので0.4/1000=0.0004アンペア=0.4mAの電流が流れます。すると当然Rcにも0.4mAの電流が流れます(細かく言うとエミッタ電流にはベースから流れてくる電流があるので、エミッタ電流がそのままコレクタ電流になるわけではありませんが、ベース電流はごくわずかなので無視できます)。そしたらRcをどの程度にすればよいのでしょうか?これもちょっとみそになります。例えば10Kオームにしたとします。0.4mAの電流が流れるので、ここでの電圧降下が10×0.4=4v(KオームとmAを掛け合わせるとだたのvになります。この組み合わせは非常に多いので覚えておいて下さい)です。つまりベースに1vのバイアスがかかっていれば、Reに0.4vの電圧がかかり、0.4mAの電流が流れ、Rc(10k)で4vの電圧降下があるということです。

エミッタ電圧2

電源電圧を例えば5vにしてみましょう。バイアス電圧によりベースには1vの電圧がかかっています。さらにRcを10Kオームとすると電圧降下は4vなので合わせて5の電圧になりちょうどよいです・・・と、よくないです。それではベース電圧が変化したときにコレクタ側から取り出せる電圧の変化分が全然ないということになり、アンプになりません。コレクタ側で自由に変化できるマージンが必要なのです。

じゃどうするのかというと、電源電圧からベース電圧を引いた分がコレクタで自由になる電圧分だと考えると、無信号時のコレクタ電圧がその自由になる電圧範囲のちょうど真ん中なら最も有効に増幅ができることになります。電源が5vでベース電圧が1vなら4v分が自由になる電圧なので、その中間の2v(ベース電圧から、もしくは電源電圧から)が無信号時のコレクタ電圧ならよいということになります。

下の図でいえばコレクタ電圧は出力を引き出している部分、コレクタ端子の部分の電圧で、ベース電圧より2v高い3vということになります。この電圧はどういう風にして作るのかというと、(NPN)トランジスタの鉄のおきて、ベース電圧より0.6v低いのがエミッタ電圧という性質からReには0.4vの電圧がかかり、したがって流れる電流はIc=0.4/Reアンペアで、その電流が必ずRcを流れます(何度も言いますがほんとはちょっと違いますが、無視)、するとRcにおける電圧降下はRc・Ic=Rc・0.4/Reになります。

Rcで2v消費されベース電圧で1v消費されます、すると残りの2vはどうなるのでしょうか?これも長いこと僕を苦しめていた謎なのですが、最近は割り切りました。これはトランジスタが吸収してくれるに違いない。ただ余った分はトランジスタが吸収すると思いますが、足りない分はトランジスタは捻出できないので回路として成立しません、ためしにRcを適当に大きくしてみると電圧配分が破たんして作動しません。

エミッター接地電圧分布

ここで要注意なのは、入力の信号の強さです。エミッタ電圧の動作点(信号がない時の電圧もしくは電位)が、0.4vということは入力信号があるとそこを中心にしてエミッタ電圧は上下することになります。上に振れる分はある程度よさそうですが下に振れるのは最大でも0.4vまでです。それを超えるとマイナスになってしまいますが、エミッタ電圧はマイナスにはならないので、そこで波形がつぶれることになります。ということは入力信号の大きさは上下に0.4vまでということです。それ以上の入力があると音がひずんできます。

ベース電圧とエミッタコレクタ電圧

さらに詳しく言うと、コレクタ電圧はベース電圧より高くないとベースからコレクタに向かって電流が逆流するかもしれません(よく知りませんが)。これに関しては少し難しくなるので、あとでまた考察します。今のところはこれくらいで理解しておいて下さい。少しくらい設計に無理があっても音は出ます。

 

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