性病

性病にはいろいろあります、最近多いのはクラミジアと淋病、外陰ヘルペス症などです。そのほかには梅毒などもたまにあります。ほかにトリコモナス症やコンジローマ(いぼのようなものが外陰部にできる)も性病です。トリコモナスは入浴でも感染する可能性がありますので、感染した場合はお風呂の順番は考えましょう。当院では性病の検査はトリコモナス、クラミジア、淋病をまず行います。できれば梅毒やエイズなども調べたほうが良いでしょう。ところでカンジダ症は性病ではありませんが、カンジダ症になったら性交はしばらくしないがよいでしょう。

カンジダ症カンジダ菌の絵

性病ではありませんがここで説明します。外陰部のかゆみの一番の原因菌です。カンジダ菌は真菌と言ってカビの一種です、皮膚の表面にいます、普段は特に問題になりません、常在菌です。しかし体調不良などで免疫力が低下すると腟の中で増えてきます。特に妊娠したり糖尿病があるとよくカンジダ症になります。疲れやストレスも原因になるようです。

カンジダ症になるとおりものが豆腐のカスのような白いつぶつぶのおりものになります、たまには黄色いつぶつぶのおりものになることもあります。治療は洗浄してカンジダ菌をきれいに取り去って抗真菌剤の腟座薬を入れます。だいたい1回で治ります。かゆみがひどければ塗り薬も塗ります。ふつうはカンジダの薬とステロイドを塗ることが多いです、ただしステロイドだけを塗るとカンジダは悪化するので必ずカンジダの薬を塗ってからステロイドを塗るようにして下さい。ステロイドはかゆみ止めです。

トリコモナス症トリコモナス原虫

トリコモナスは原虫と呼ばれます。虫かどうかは知りませんが、細菌よりはだいぶ大きいです。鞭毛で動きます、見ようによってはかわいいです(顕微鏡で見えます)。おりものは結構黄色くなって、少し泡状のおりものになります。かゆみも強いようです。性交で感染しますが、お風呂でも感染するらしいです、おそらく座るやつ(名称不明)で感染するのではないかと思います。お風呂にはいるときは、座るやつはしっかり水かお湯で流して洗ってから座るようにしましょう。治療はフラジールという薬を使います(腟剤と飲み薬があります 飲み薬は断酒薬と似ていて服用中にお酒を飲むとおなかが痛くなります→大丈夫だったと言う人もいますが・・・、まれに脳に取り込まれて中神経障害を起こしふらついたりするようなので、そういう時はすぐに中止して下さい)

クラミジア

クラミジアは非常に多いです、特に若い人に多いです。少し前までは妊婦さんの1-2割はクラミジアに感染していましたが、最近(現在2017年)はより若い人に多いような気がします、だいたい10代から20代前半の人に多いようです。もちろんそれ以上でもなりますので、あまり年齢は関係ないですが・・・。

 クラミジアに感染すると将来不妊症になりやすいと言われます。クラミジアはまず腟に感染しておりものが出たりしますが、だんだん子宮の方へ移動していって場合によっては卵管に感染して卵管炎を起こします。このときおなかが何となく痛い(鈍痛)という症状があることが多いとされていますが、どうもない人も多いようです。卵管炎を起こすと卵管はソーセージの様にはれ上がったり、卵管内膜がダメージを受けたり、卵管の出口が完全にふさがったりします。卵管がこのような状態になると卵の移動がうまくいきませんので不妊症になったり、もっとも困るのが子宮外妊娠の原因になったりするのです。

クラミジアはその後子宮の周りに炎症を広げていって最後には肝臓の周りに強い炎症を起こします。ある程度炎症が広がるとクラミジア自体はなくなっていくようですが、肝臓の周りの炎症の後にはたくさんの納豆の糸のような薄い膜ができます。これをフィッツ・ヒュー・カーティス症候群といいますが、取り立てて肝機能などに影響することはありません。単にここでクラミジアが繁殖して炎症を起こしたということが手術の時に分かるだけです。

卵管に感染すればクラミジアが治ってもダメージを受けた卵管は元に戻りません。従ってクラミジアは腟炎(正確には子宮の入り口である頚管という部分に感染するので頚管炎と言います)のうちに治療する必要があるのです。卵管の機能が完全に損なわれていれば妊娠するためには体外受精をする必要があります。もし卵管が腫れ上がっていれば、中に着床に影響する炎症性の液体が溜まっているので、卵管切除してから体外受精したが良いとされています。

ところで最近は咽頭クラミジアが結構あります(昔もあったのでしょうが調べられなかった)。うがい液で調べられますので、のどの違和感があれば調べたほうがよいでしょう。

おまけにクラミジアで結膜炎になることもあるようです、目が充血した場合も眼科で調べてもらったがよいと思います。

クラミジアの症状

クラミジア経管炎をおこすとおりものが増えますが、クラミジアに感染しても必ずしも経管炎を起こすとは限らないようです、外来診療では顕微鏡ではおりものは全くきれいなのに、クラミジアに感染されている場合があります。これはそういう情報(パートナーがクラミジアになっているなど)がなければ調べませんので、おりものだけで判断するのは難しいということになります。また卵管炎や骨盤腹膜炎を起こせば鈍痛になるとも言われますが、鈍痛もいろんな状態で起こるので(例えば便秘やガスだまりなど)、やはりそれだけではクラミジアを積極的に疑う根拠にはならないと思いますし、実際子宮より上に行ってしまったクラミジアを検査で捕まえるのは難しいです。

クラミジアの検査

腟や子宮の入り口にいるときはおりものの検査をすればよいですが、例えば卵管にいるときや骨盤内にいるときには調べようがありません。血液検査で抗体を調べるという方法もありますが、これはクラミジアIgG抗体とIgA抗体を調べる方法で、保健所などでエイズと一緒に調べてくれる方法もこれです。この検査は基本的に今現在のクラミジアの感染というより過去に感染したことがあるかどうかを知る検査と言うことになります。クラミジアに感染して抗体が検査で確認できるのにおそらく1か月以上かかると思います(おそらくです よく知りません)、しかもIgG抗体は一度できると一生消えません、IgA抗体は1年ほどで消えるといわれますが、実感としてはもっと長く出ているような気がします(数年)。ですからIgG抗体が陰性ならクラミジアに感染してないといえるでしょう。IgG抗体陽性IgA抗体陰性なら過去に感染して治っているということになります。両方陽性なら最近かかって現在もどこかでクラミジアが生きているということになりますが、どこにいるかはわかりません、しかもIgA抗体も結構長い間出るので、とっくに治っていることも考えられます。ただ調べようがないので仕方なくクラミジアの薬を飲んでもらいます。

クラミジアの治療

ニューキノロン系やマクロライド系の抗生剤で治療します。1日1錠を1週間飲む薬や、1日2錠を2週間飲む薬(妊婦さんはだいたいこれでしょう)、いっぺんに4錠を飲んで終わりだったり、液体の抗生剤を1回飲んで終わりだったりします。それぞれの状況によって使い分けられているようです。ふつうは1週間後に再検査して治っていることを確認します。最近の問題は耐性菌です、以前は治療すれば確実に治ってましたが、最近は抗生剤の効きが悪いクラミジアがあります。その場合は上記の治療を組み合わせることになります。抗生剤を使いすぎると今度は耐性菌の問題が出るので、抗生剤の使い方は難しいですね。

淋病

淋病はクラミジアほど多くはありませんが、クラミジアと同時に感染している場合もあるようです。淋病は性病として感染していると思います(クラミジアは性病以外の感染の経路があると思うのですが・・よくわかりません)。クラミジアは男性の場合ほとんど症状がありませんが、淋病は逆に男性の方が尿道炎を起こして症状が強いようです。女性の淋病は必ずしも尿道炎を起こすわけではなく、やはり腟炎の状態になります。従ってちょっとおりものが汚くなる程度でこれといった症状がないこともあります。パートナーに排尿痛などがある場合は調べることをおすすめします。これもクラミジアと同じく咽頭炎をおこします。うがい液で調べられます。治療はクラミジアとほぼ同じでよいですが、場合によっては抗生剤の点滴をすることもあります。

外陰ヘルペス

ヘルペスはウイルスの病気です。抗ウイルス剤で治療しますが、一度感染すると根治することはできません。一見治ったように見えても、神経の奥の方に隠れており体の調子が悪くなるとまた出てくることがあります、結構年を取ってから出てくることもよくあります。治療は抗ウイルス剤の服薬や塗り薬を使います。初感染で症状が激しい場合は抗ウイルス剤の点滴をします。ヘルペスには1型と2型があり、性器にできるのは2型が多いと言われていますが、必ずしもそうではなく混在しています。

 初感染の時は症状がひどくなることが多いですが、不顕性感染といって症状が全くない場合もあり、症状がいきなり再発から始まると言うこともあります。ヘルペスの再発は口内炎のような白い痛い潰瘍(ただれ)が外陰部にぽつぽつとできるのですが、初感染ではそれがびっしりとできて痛くて歩けなくなることもあります。

 外陰ヘルペスは性病として感染します。多くの性病はコンドームを付けることにより予防することができますが、これはペニスや腟にできるわけではなくその周りにできるわけですから、コンドームでは予防できません。しかも症状がなくてもウイルスが相手に感染することがありますので、性交を行う限り外陰ヘルペスは予防できないということになります。

コンジローマ

これは外陰部にできるウイルス性のいぼです。ヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)というウイルスにより感染します(子宮頚癌の項で説明しますが、HPVは子宮頚癌の原因になるといわれていますが、それとこのコンジローマになるウイルスとは同じ種類ですが、型が違うので別なウイルスです、コンジローマになると子宮頚癌になるわけではありません)できると多少痛いですが、ヘルペスほどではありません。しかし相手にうつしてしまうので治療はしなくてはいけません。治療は局所麻酔をして切り取ったり、電気メスで焼いたりします。抗ガン剤の軟膏を塗ることもありますが、軟膏自体がかなり皮膚に対して炎症を起こします。 組織検査をしてちゃんと診断したほうが安心なので、切除するのが良いと思います(焼いたり、軟膏塗ったりして治療すると正確な診断ができません、まれにボウエン病というまれなある種の癌のようなものだったりします、悪性度は低いようなので焼いてもいいのかなとは思いますが、やはりちゃんと診断したほうが気分は良いです)。

梅毒

梅毒の症状(たとえばバラ疹などですが、このような症状はある程度梅毒が進まないと出てきません)を僕は見たことがありません。昔は性病といえば梅毒だったようですが最近はそれほど多くは見かけないようです(ないことはないです)。手術などの前や妊娠したときなどは感染症の検査として梅毒やB型肝炎の検査を行うのが一般的ですのでそのとき分かることがあります。抗生物質を使用することにより治ってしまいますので、検査さえしておけばそれほど怖い病気ではないように思います。

 

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